博士の愛した数式 お正月公開予定の映画、「 博士の愛した数式 」(配給:アスミック・エース)。 先日、その原作(小川洋子著・新潮社)を読み終わりました。 第一回本屋大賞に輝いた小川洋子の原作を深津絵里と寺尾聰の共演で映画化「博士の愛した数式」のネタバレを結末まで。シングルマザーの私は家政婦として顧客を紹介されると80分しか記憶が持たない元数学者だった。原作では私の視点だが映画では数学教師になったルートの視点。 <僕の記憶は80分しかもたない>今回の小説読書感想は小川洋子さんの『博士の愛した数式』第1回本屋大賞!『忘却探偵・掟上今日子』の西尾維新さんも影響を受けている?『博士の愛した数式』は夏休みの読書感想文が書きやすい一冊。『博士の愛した数式』を夏休み真っ只中の学生 … 《僕の記憶は80分しかもたない》博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた――記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だっ 小川 洋子『博士の愛した数式』の感想・レビュー一覧です。ネタバレを含む感想・レビューは、ネタバレフィルターがあるので安心。読書メーターに投稿された約1301件 の感想・レビューで本の評判を確認、読書記録を管理することもできます。 『博士の愛した数式』は小川洋子の出世作。小川洋子は『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞しているが『博士の愛した数式』で人気作家の地位を不動のものにした。, 私は小川洋子のデビュー直後から小川洋子を追いかけ続けるほどに小川洋子が好きなのだけど、映画は今まで観たことがなかった。(原作の感想はこちら), …恥ずかしながらアレですよ。「原作ファンはどんなに美しく実写化しても納得出来ないんでしょ?」みたいに言われるのが嫌だったのだ。, それなのに夫が突然「そう言えば観たことなかったわ。小川洋子って白蓮さん好きだったよね」とレンタルしてきたので、観ない訳にはいかなくなってしまった。, 今回は純粋な映画の感想…と言うよりも「小川洋子のマニアが観た映画の感想」になります。ナチュラルにネタバレも入ってくるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。, 数学教師は子ども達に自分がルート(√)と呼ばれるようになったキッカケを話はじめる。, 母親は、交通事故による高次脳機能障害で記憶が持たない元数学者「博士」の家で働くことになった。, 博士はこよなく数学を愛し、他に全く興味を示さないのだが、ルートの母親に10歳の息子がいることを知った博士は、幼い子供が独りぼっちで母親の帰りを待っていることを居たたまれなく思い、次の日からは息子を連れてくるようにと言う。, 映画版『博士の愛した数式』は原作を忠実に再現した作品…との評判だったけれど、実のところそうでもなかった。, まず出だしからして随分違う。映画版は数学教師になったルート少年が生徒に語る場面からスタートするが、原作では物語のラスト近くでルートが博士に「数学教師になりました」と報告する程度。, 原作ではほんのり漂わせる程度になっていて読者は「あっ!」と気がつくようになっているのだけど、映画版ではガッツリと義理の姉に心情を語らせている。, 私は原作の方が好きだけど、原作の場合読み手によっては気づかない人もいるかもな…くらいの扱いになっているし、映像として観ると場合「ふんわり漂わせる」程度では観る人には伝わらないので、映画版での描き方もアリだと思う。, 小川洋子が描きたかったのは「博士と義理の姉の不倫話」ではなかったと思うだけに、ちょっと残念な気がするけれど「受け手の解釈の違い」の範疇だと思う。, ……と言う問題はさておき、役者さんの演技が素晴らしかった。特にルートの母親を演じた深津絵里と博士を演じた寺尾聰。, 『博士の愛した数式』の映画キャストが発表された時、寺尾聰については「無難にハマり役だろうな」と予想していたけれど、深津絵里も意外と良かった。小川洋子ワールド的主人公って感じ。, 残念だったのは博士の義姉を演じた浅丘ルリ子。どうして浅丘ルリ子でなければいけなかったのか? 私には義姉に浅丘ルリ子を起用した理由が1ミリも分からなかった。小川洋子ワールドに突っ込むにしては、あまりにも下品。1人だけ悪人テイストが漂っていて残念過ぎた。, これについてはルートが数学教師として生徒達に数学の楽しさや美しさを語る場面が効いていたと思う。, そして「愛」と言う意味では、博士の愛、ルートの母の愛、ルートの愛が美しき表現されていて公開当時ヒットしたのもうなずける。, 映画版『博士の愛した数式』の原作ファンの見どころは、なんと言っても原作者、小川洋子自身が映画に出演している場面。, ラスト近くの薪能の場面。ルートの母、博士、博士の義理の姉が薪能を鑑賞しているのに並んで、小川洋子も薪能を観ているのだ。薪能の場面が出てきたら、正面左側を注目して戴きたい。, 小川洋子の文庫本や単行本の折返しにある「著者近影」そのままの小川洋子の姿を観ることが出来る。小川洋子ファンからすると、そこを確認出来ただけでも「観た甲斐があった」と言うものだ。, 小川洋子って、作風が作風なだけに引っ込み思案な感じの人かと思っていたけど、自分の書いた作品の映画に出ちゃうようなお茶目な一面があったのだなぁ。, 小川洋子ファンの視点から観ると、良い部分もあれば残念な部分もある作品だけど「原作知ってます」って部分を抜きにして観ると、素晴らしい作品だと思う。, 役者さんの演技、音楽、映像(舞台背景)どれを取っても素晴らしい日本映画だ。そして映画を観て原作が気になった方は原作も手に取って戴きたいな…と思う。, 1972年生。女性。「ゆら」または「ゆらら」と名乗ることもあります。詳しいプロフィールはこちら。お問い合わせはこちら。. Copyright © 2002-2021 白い木蓮の花の下で All Rights Reserved. 博士は息子を、ルート(√)と呼んだ。 博士が教えてくれた数式の美しさ、キラキラと輝く世界。 母子は、純粋に数学を愛する博士に魅せられ、次第に、数式の中に秘められた、美しい言葉の意味を知 … 2年半前、小川洋子さんの『博士の愛した数式』が単行本として世に出た。風変わりな物語だった。 主人公は64歳の数学者。1975年以降の記憶は80分しか持てず、この世で最も愛しているのは素数(1と自分自身以外では割り切れない数)という人物だ。 「博士の愛した数式」は映画と原作の本あまり内容が変わりませんか?あまり変わってないと思うのですが・・ 映画は原作にとても忠実に作られていて気品が守られていると思いました。 小川 洋子『博士の愛した数式』の感想・レビュー一覧です。ネタバレを含む感想・レビューは、ネタバレフィルターがあるので安心。読書メーターに投稿された約1301件 の感想・レビューで本の評判を確認、読書記録を管理することもできます。 博士の愛した数式 (or rather, "The Professor's Beloved Equation" .. or, as it is listed here "The Housekeeper and the Professor") is a heart-warming novel that focuses on a housekeeper who tends a former university mathematics professor. 『博士の愛した数式 』は小川洋子が書籍化(新潮社刊)したものをを映画化したもの。作中には素数をはじめ、完全数や友愛数、ネピア数のほかオイラーの公式や、直線の話が出てくるが、分りやすく説明されている。ちなみに博士の愛した数式は<Eπi+1=0>なのだが、その意味とは … 博士の愛した数式の映画レビュー・感想・評価一覧。映画レビュー全35件。評価3.4。みんなの映画を見た感想・評価を投稿。 月一回、映画好きが集まっておしゃべり会をしている。今日は午後から三々五々やってきて、最終的には老若男女8人が熱心な話をした。本当に映画を好きな人間が思いっきり映画のことを話すことの出来る場所というのは、実はほとんど無い。私の知り合いはみんな私が映画を良く観て … また、原作では深く描かれなかった博士と未亡人の関係についても触れている(2人が不義の関係にあったことをうかがわせる)などの違いはあるが、原作をほぼ忠実に映画化している。 キャスト. 博士の愛した数式を読みました。今までに読んだことがないようなジャンルの小説で結構楽しめたのですが、ふと疑問に感じたのが、博士の病気は実際にあるものなのでしょうか?似たような話はきいたことがあるのですが.. 《僕の記憶は80分しかもたない》博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた――記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だっ とても優しく、美しく、切ない想いに、思わず涙してしまう名作小説。記憶を維持できない病を持つ博士と、家政婦と、彼女の子供を中心にしたこの物語は、決して明るい内容ではありません。それなのに、暗さを感じさせない、前向きで暖かな印象の残る作品となっています。
『博士の愛した数式 ... また、原作では深く描かれなかった博士と未亡人の関係についても触れている( 2 人が不義の関係にあったことをうかがわせる)などの違いはあるが、原作をほぼ忠実に映画化している。 原作読み終わりました。だからこれはレビューではなくて、読書感想文です。 ネタバレ100パーセントです。 原作を読み通してもやはり恋物語でした。 そして小説の方は映画よりもっとわかりにくい。しかもオイラーの公式の-1もでてこないし。 「博士の愛した数式」は映画と原作の本あまり内容が変わりませんか?あまり変わってないと思うのですが・・ 映画は原作にとても忠実に作られていて気品が守られていると思いました。 つい先日、『博士の愛した数式』を読了しました。映画の方は何年も前に見ていたのですが、原作に触れるのは今回が初めてでした。 博士の愛した数式 (新潮文庫) 作者: 小川洋子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2012/07/01 メディア: Kindle版 購入: 5人 クリック: 6回 この商品を含むブ … 『博士の愛した数式』(はかせのあいしたすうしき)は、小川洋子による日本の小説。 概要. 『妊娠カレンダー』『ミーナの行進』などで多くの賞を受賞している小川洋子さんは、国内だけでなく海外でも愛される作品を数多く生み出してきました。 今回の記事では、2006年に映画化もされている『博士の愛した数式』の読書感想文を書くときのポイントとあらすじをご紹介しま … 初出は「新潮」2003年7月号。同年8月29日、新潮社より刊行された。装画は戸田ノブコ。 2004年 2月1日、第55回読売文学賞を受賞。同年4月15日、第1回本屋大賞を受賞。 小川洋子さんが書かれた,「博士の愛した数式」の中で,未亡人とお手伝いさんが険悪な雰囲気になったとき,博士が,オイラーの公式のメモを机に置いたら,未亡人のわだかまりがとけたという下りがありますが,あれは,どういう意味なんで 博士の愛した数式を読みました。今までに読んだことがないようなジャンルの小説で結構楽しめたのですが、ふと疑問に感じたのが、博士の病気は実際にあるものなのでしょうか?似たような話はきいたことがあるのですが.. 2年半前、小川洋子さんの『博士の愛した数式』が単行本として世に出た。風変わりな物語だった。 主人公は64歳の数学者。1975年以降の記憶は80分しか持てず、この世で最も愛しているのは素数(1と自分自身以外では割り切れない数)という人物だ。
博士の愛した数式とは? ... また、原作では深く描かれなかった博士と未亡人の関係についても触れている(2人が不義の関係にあったことをうかがわせる)などの違いはあるが、原作をほぼ忠実に映画化して … 小川洋子『博士の愛した数式』 やあ! よいこのみんな。夏休みの宿題はちゃんとやってるかな? そんなわけないよね! きょう(8月14日)あたりが、ハッキリ言って、焦りを覚えはじめる、まさにそのと … 博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。 数字が博士の言葉だった。 やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。 原作厨による違いポイント. ・博士の愛した数式 - Wikipedia・オイラーの等式 - WikipediaTVで2度見ました。1度目は、博士と家政婦、その息子の交流はほほえましくて、そこが印象に残ったんですね。2度目は、博士と未亡人について部分が、印象に残ったわけ To see this page as it is meant to appear, please enable your Javascript! 2月に、映画『博士の愛した数式』を見た。 見終わった途端、無性に原作を読みたくなって、自宅から一番近い区立図書館に行った。 館内パソコンで「博士の愛した数式」と入力し検索をかけてみたら、貸出中だったので予約を入れた。 予約者数25名。 『博士の愛した数式』は2003年に刊行され、数々の文学賞を受賞した作品です。 英語のタイトルは、直訳すると「家政婦と博士」になります。 物語の主人公である家政婦と数学者がタイトルに反映されてい … 今頃ですが、映画『博士の愛した数式』の感想をお願いします いい映画だと思います。ただ,原作を読んだ人は,原作にある場面がないとか,原作にない場面があるとか,あの場面は原作とはかなり違うなど,いろいろな違いが目につくと思います。しかし,活字の場合は,読者一人ひと … 小川洋子『博士の愛した数式』 やあ! よいこのみんな。夏休みの宿題はちゃんとやってるかな? そんなわけないよね! きょう(8月14日)あたりが、ハッキリ言って、焦りを覚えはじめる、まさにそのときだよね。 映画版『博士の愛した数式』は原作を忠実に再現した作品…との評判だったけれど、実のところそうでもなかった。 まず出だしからして随分違う。 『博士の愛した数式 ... また、原作では深く描かれなかった博士と未亡人の関係についても触れている( 2 人が不義の関係にあったことをうかがわせる)などの違いはあるが、原作をほぼ忠実に映画化してい … 「博士の愛した数式」で「私」と同じような感動を「数」に感じた人は、「フェルマーの定理」を読んで絶対損はしないと思います。 ハードカバーで、今後文庫化されたりってことは多分ないと思うので、読むには買うか、図書館で借りるかのどっちかですが、これはもう買って損なし! 『博士の愛した数式』は2003年に新潮社から刊行された小川洋子の小説である。小川洋子の小説博士の愛した数式についてのあらすじや作品解説はもちろん、長文考察レビューや評価を閲覧できます。現在、実際に博士の愛した数式を読んだユーザによる11件の感想が掲載中です。 この記事で、ベストセラーで映画化もされた本作の秘密をひも解いていきましょう。ぜひご覧ください。, 今ではメジャーな存在となった、本屋大賞。2004年におこなわれた第1回の受賞作が、本作です。その内容は共感を呼び、たちまちベストセラーに。映画化もされ、寺尾聡による博士役が話題を呼びました。, 「私」が家政婦として派遣された家には、博士が1人暮らし。彼は交通事故で脳を損傷し、記憶が80分しか持たないのでした。そんな彼は、数字にしか興味がありません。いつも着ている背広には、「忘れてはいけないこと」が記してあるメモ用紙が、いたるところに貼り付けられています。, そのメモの新しい1枚になった「新しい家政婦さん」である私は、はじめは戸惑いながらも、クセはあるけれど素直な博士の性格と、彼の話す数字の世界にしだいに親しみを覚えはじめるのです。, ある時、私に子供がいることを知った博士に「子供を1人で、家に待たせておいてはいけない。すぐに呼んできなさい」と促され、10歳の息子も一緒に連れてくることになりました。, 博士がつけた彼の名前は、「ルート」。彼は博士に宿題を見てもらったり、博士の話に興味を持ったりして、2人はしだいに友達になっていくのです。しかもお互い、プロ野球の阪神タイガースファンであるという共通点があったことを知って、ますます盛り上がります。, しかし、博士の知っているタイガースと、ルートの知っているタイガースはまったく時代の違うもの。それでも博士を喜ばせたい私とルートは、彼を家から連れ出して野球を見にいこうと誘ったりするのでした。, そんな楽しく、平和な毎日に、唐突に終わりがやってきます。この生活にピリオドを打つことを宣告したのは、博士の義姉。家政婦の仕事の依頼者で、離れに住む未亡人です。謎の多い彼女は、いったい何者なのでしょうか。, 博士との交流を諦めざるを得なかった私ですが、ルートの思い切った行動によって、事態は変化を遂げてゆくのです……。, 語り手である私の目線で進む本作は、読んでいるこちらも、登場人物たちとまったく同じように博士と接することができる作品です。博士が話す数字の魅力や、数学の面白さを、私と同じように体感することで、ちんぷんかんぷんだったその羅列が、謎めいた、美しいものに見えてくるはず。, まだ見たことのない美しさを、それを知る感動を、登場人物の視点を通して感じることができるでしょう。, 本作の魅力の1つは、その個性的な登場人物たちの描き方だといえます。ほとんどの場面が博士の家の中で展開され、博士、私、ルート以外の登場人物がきわめて少ないのが特徴。そんな本作の、主な登場人達たちを見ていきましょう。, 1962年、岡山県生まれの作家。1991年に、妊娠した姉に対する悪意を描いた問題作『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞。作家として第一線で活動する傍ら、2007年からは芥川賞の選考委員も務めています。, そんな彼女の書く作品は、どれも静かで美しいイメージといわれます。しかし、ほとんどの作品が『博士の愛した数式』のように、ほのぼのと温かい雰囲気を持っているわけではありません。むしろ、重く冷たい雰囲気を漂わせているものの方が多いと感じるでしょう。, この物語の中心となっているものは、数式、そして阪神タイガースです。小川洋子は、幼い頃に医学書を読んでいた影響からか、化学のことをわかりやすく話してくれる本も出版しています。そして、熱烈な阪神タイガースファンなのです。, この物語は、彼女が好きなもの、美しさを見いだせるものを中心に書かれています。それによって、彼女ならではの視点や思いが集結し、自然と明るさや優しさが、本作に表れたのではないでしょうか。, 本作のなかでは、いろいろな数式や計算方法が出てきます。なかでも重要な意味を持つのが、「オイラーの等式」です。, これは、三角数に関した数式なのですが、説明することは、やや困難です。ですが簡単に説明してみます。, まず、図形などに関する幾何学では「円周の長さ÷直径」を「円周率π」と定義します。おそらくこれは、学生時代に数学の勉強で学んだという方が多いのではないでしょうか。, 次に方程式などに関する代数学は、「i×i=-1」となる数として「虚数単位i」というのが定義されています。, そして微分・積分などに関する解析学では、「ネイピア数e」というのが定義されているのです。, 本来関係のない、この3つの式が「eiπ+1=0」という形で繋がったもの。これが「オイラーの等式」なのです……難解すぎて、正直よくわからないですね。しかし、博士はこれを愛してやまないのです。, 彼が好きなものは、この「オイラーの等式」をはじめ、すべて数式に関係しています。どんな数字でも嫌がらず、自分の中にかくまってやる強い記号、という意味から名づけた「ルート」。完全数28の背番号を持つ、阪神タイガースの「江夏」。 1とその数字以外に約数がない「素数」の存在や、誰もその観念を持つことができなかった「0」の誕生……そういったものが挙げられます。, 語り手の私のみならず、読んでいるうちに、ひょっとして数字って本当に美しいのではないか……と知らず知らずに興味を持ち、その世界に引き込まれていってしまうかもしれません。, この物語のなかで謎となっているのが、未亡人の存在です。初めから彼女は淡々とした口調で、事務的に私に接しています。そのため、義理の弟である博士への感情をうかがい知ることはできません。むしろ、冷たいのではないかというふうにすら感じてしまいます。, しかし、私とルート親子と、博士の距離が近づいてくるに連れて、今まで傍観していたかのように見えた彼女が、にわかにその存在を主張し始めるのです。, 博士を外出させたことが気に入らなかった彼女は、私にいきなり解雇を申し渡します。博士と私たちは友達なのだという訴えにも「義弟に友達などいません」「お金ですか」と、金銭目的で近づいているという疑念まで投げかけてくる始末。, 憎まれ役ともいえる彼女ですが、物語が進むに連れて、博士の人生に大きく関わっていた人物だということがわかってきます。どうやら2人は、恋愛関係にあったらしいのです。義理の関係とはいえ姉弟なので、禁断の愛といえます。, しかし、物語のなかでは、この2人の関係は一切明かされていません。あくまで、物語のなかで見えてくることからの考察となります。, 読者は、私が見つけたモノや、彼女の言動から憶測していくしかないのです。真実は、ただ作者だけが知っているということになります。, ケーキのろうそくが足りないことに気づき、ルートが買い物に出かけます。予想以上に遅くなっている彼の帰りが、心配でたまらなくなった博士。私が様子を見に出かけます。やがてルートとともに帰宅すると、そこには打ちひしがれた博士の姿が……なんと、ケーキをひっくり返してしまったのでした。, ケーキを安全な場所に動かそうとした彼の優しさと、彼を傷つけまいとする私とルートの、思いやりの言動すべてが胸を刺す名場面です。そして、この誕生パーティーで、彼らは一生忘れらないこととなる思い出を作ることになります。, 本作は物語自体は難しいものではないのですが、数学がたくさん出てくるので苦手意識がある方はツライと感じるかもしれません。, この作品は、その数学の場面を漫画特有のコマ割りを利用して、とてもうまく表現しています。数学とストーリーとの間が絶妙なうえに、原作に忠実で読みやすいものとなっています。, 思わず線を引きたくなるような名言がいっぱいの本作。そのなかから、少しだけ抜粋してみましょう。, 「この数式に隠された意味を知っているものは限られている。その他大勢の人々は、意味の気配すら感じないで生涯を終える。今、数式から遠く離れた場所にいたはずの一人の家政婦が、運命の気まぐれにより、秘密の扉に手を触れようとしている」(『博士の愛した数式』より引用), 博士と出会うことがなければ、決して触れることのなかった数字の魅力。そのワクワク感が伝わると同時に、博士と出会えたことの素晴らしさ、喜びも同時に感じられるような言葉です。, 「実生活の役にたたないからこそ、数学の秩序は美しいのだ」(『博士の愛した数式』より引用), これは博士が数字について語った言葉です。無駄だからこそ美しいとは、どういう意味なのでしょうか。しかし、なんだか真理をついているような気がします。, 「ちびた鉛筆でメモを書いて、身体に貼っている時の博士を見ると、僕はいつも泣きたくなるんだ」「どうして?」「だって、淋しそうなんだもん」(『博士の愛した数式』より引用), 私とルートの会話です。博士を普段からよく見ているルートだからこそ、気づけたのでしょう。自分の記憶が80分しか持たないという事実。やはり、それが目に見える形となって残っていくのは、淋しいのではないでしょうか。, なんとか未亡人と和解することに成功し、私は再び博士の家で家政婦を務めることになりました。そしてパーティーの場面で山場を迎えた物語は、ラストへと向かうのです。, その後の私たちと博士がどうなったかは、具体的な場面として描かれておらず、私の報告のような形になっています。それが、彼らの流れていった時がどんなものであったかを物語っているのですが、目の前に鮮やかに浮かび上がるその様子が切なくて、優しくて、涙を誘います。, 記憶が80分しか持たないという悲観的な現実。しかし、そんななかでも、博士は幸せだったのではないでしょうか。また博士と出会えたことで、私やルートも、美しい数学と触れ合いながら、幸せな時を過ごしたに違いありません。, 流れていく時間のなかで、博士と、彼が愛した数式だけは、時が流れずに美しいまま、いつまでもそこに存在し続けているのでした。, 『博士の愛した数式』でほろりとこぼれる涙は、悲しいものではなく、切なさと優しさと、そして爽やかさからくるものなのかもしれません。この本を開くと、日常世界のなかにありながら、気づかない美しいものたちに触れることができます。そして、それは実はとても大切なものなのではないかと、日々の自分と、その周りを振り返ってみたくなる。そんな物語です。, ホンシェルジュはamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。, 5分でわかる『星の王子さま』!本当に大切なものとは?王子さまは死んでしまったの?【あらすじと解説】, 【200万人の本好きが選ぶ】おすすめ小説ベスト50!本当に面白い名作をジャンル別に紹介【2020年最新】. 博士の愛した数式(はかせのあいしたすうしき)とは。意味や解説、類語。小川洋子の長編小説。事故による脳の損傷で記憶を持続できなくなった数学者と家政婦、その息子の交流を描く。平成15年(2003)刊行。翌年、第1回本屋大賞大賞受賞。平成18年(2006)映画化。 第一回本屋大賞に輝いた小川洋子の同名ベストセラーを寺尾聰、深津絵里主演で映画化。監督は「雨あがる」の小泉堯史。80分しか記憶が続かない初老の天才数学者と一組の母子の心温まる交流を優しい眼差しで描く。家政婦をするシングルマザーの杏子は、80分しか記憶が持たない天才 … 原作を読んでから見たらガッカリな内容ですね。なんか原作のイメージと違い博士が元気すぎます。家を出るにもオドオドしてた博士が元気に走り回ったり野球をしたりとなんか違うって思いました。 博士に対する私とルートの誠実な友情、そして博士の純粋な好奇心、優しさは読んでいて本当に気持ちの良いものでした。 ぜひ数式という言葉に物怖じせず、読んでほしい作品です。 『博士の愛した数式 』は小川洋子が書籍化(新潮社刊)したものをを映画化したもの。作中には素数をはじめ、完全数や友愛数、ネピア数のほかオイラーの公式や、直線の話が出てくるが、分りやすく説明されている。ちなみに博士の愛した数式は<Eπi+1=0>なのだが、その意味とは・・・。 小川洋子著「博士の愛した数式」の英語版を読みました。 英語での題名は "The Housekeeper and the Professor" です。 直訳すると「家政婦と博士」。 ずいぶん日本語の題名と違いますね! もしそうだとしたら、この原作にはない新しい解釈で、”博士の愛した数式”であるオイラーの等式 e iπ + 1 = 0 が、ただ純粋に美しく奇跡的な数字の関係を表している、というだけではなく、博士、家政婦、ルート、未亡人の関係をもあらわすものとして理解できる気がします。 後から原作を読んで違いが分かった。 原作には、時間を過ぎてからの描写があったが映画には無かった。 あと、原作だと、博士が阪神を好きになるなり方も独特で、そこが味わいでもあるのだけど、映画だと博士に野球をさせてしまって、全然違う。 ・博士の愛した数式 - Wikipedia・オイラーの等式 - WikipediaTVで2度見ました。1度目は、博士と家政婦、その息子の交流はほほえましくて、そこが印象に残ったんですね。2度目は、博士と未亡人について部分が、印象に残ったわけ 小川洋子さんが書かれた,「博士の愛した数式」の中で,未亡人とお手伝いさんが険悪な雰囲気になったとき,博士が,オイラーの公式のメモを机に置いたら,未亡人のわだかまりがとけたという下りがありますが,あれは,どういう意味なんで Sorry, you have Javascript Disabled! 数学とストーリーとの間が絶妙なうえに、原作に忠実で読みやすいものとなっています。 原作の雰囲気が伝わる、優しい絵柄も魅力的。ぜひご一読ください。 魅力7:『博士の愛した数式』の愛おしい名言たち! それによって、数学の哲理になぞられた人間論というものが、博士の愛した数式として、心優しく、静謐で、誠実に語りかけられていくのです。 小川洋子の原作小説を題材にしていますが、大幅な脚色がなされて、映画的にダイナミックな作品に仕上げられています。 ある日、博士が熱を出して寝込んでしまい、私は泊まり込んで看病をしました。 しかし、それが未亡人には気に食わず、私は一度担当を外されてしまいます。 納得のいかない私ですが、ルートは気にせず放課後、博士に家に遊びに行き、そのことで私は未亡人に呼び出されます。 未亡 … 博士 - 寺尾聰; 杏子(私) - 深津絵里; ルート - 齋藤隆成